【はじめに】営業のやり方が通用しないと気づいたとき|この講座の前提(嫁子が教えるマーケ講座)

最初に、この講座が何なのかをはっきりさせます

四月から、営業部からマーケティング部に移ることになりました。希望を出したわけではありません。

初日に渡された資料が読めませんでした。CPAとLTVが並んでいて、どちらも意味が分からないまま会議が終わりました。

この講座は、資格を取るためのものではありません。 来週の会議で意見を求められたときに、黙らずに済むようにするためのものです。


嫁子: 最初に言っておくとね、あなたが困ってるのは頭の良し悪しの話じゃないの。

営業のときは、目の前のお客さんの顔を見ながらその場で言い方を変えていたでしょ。マーケティングにはその相手がいないんだよ。同じ道具が使えないだけで、能力の問題じゃないからね。


営業のやり方が、なぜそのまま使えないのか

移ってきて最初の1か月で分かったのは、この4つでした。

営業 マーケティング
相手 目の前の1人 会ったことのない多数
修正 その場で言い方を変えられる 出した後は直せない
結果 翌日には分かる 数字が返るまで時間がかかる
手柄 自分が取ったと分かる 誰の成果か分からない

一番こたえたのは3つ目と4つ目です。営業なら訪問した数だけ前に進んだ実感がありましたが、マーケティングは何をやっても手応えがないまま数週間が過ぎます。

そして「先月の施策、効果ありました?」と聞かれて答えられません。効果があったかどうかをあらかじめ測れる形にしておかなかったからです。

営業の経験が無駄になるわけではありません

ここは誤解しないでほしいところです。

マーケティングの資料には「30代女性・共働き・時短志向」みたいな架空の人物像が出てきます。これを読んでピンとこない人が多い中で、実際に客と話してきた人間は、その人物像が現実にいるかどうかを感覚で判断できます。

この感覚は後から身につけるのが一番難しいものです。持っている前提で話を進めます。

嫁子: 私もそう思う。机の上で作った人物像って、たいてい都合が良すぎるんだよね。

「価格より品質を重視する」とか書いてあるけど、その人、セール見たら普通に飛びつくからね。実際に会ったことがある人は、そこで「いや、そうはならない」って言えるでしょ。それは強みだよ。


AIに全部やらせると、どこで困るか

今はリサーチも資料の下書きもAIがやってくれます。実際、最初の1か月はそれで乗り切りました。

ただし、そのまま出すと困る場面が4つありました。

① それっぽい戦略が、会社の実態と噛み合わない

「マーケティング戦略を作って」と頼むと、3C分析もSWOTも埋まった資料が返ってきます。見た目は完璧です。

ところが上司に見せると「うちはその価格帯では戦っていない」で終わります。AIは自社の事情を知らないので、一般的に正しいものを、一般的なまま返してきます。

② 数字を作文する

「市場規模は約1兆円」「想定CVRは3%」といった数字が、出典なしで自然に混ざります。

会議でこれを出して根拠を聞かれると、答えられません。自分で確かめていない数字は、自分の発言として使えないということです。

③ 法律に触れる表現を平気で書く

広告の文案を頼むと「業界No.1」「確実に痩せます」のような言い回しが出てきます。

これは書き方によっては法律違反になります。詳しくは第25回以降で扱いますが、AIは「その表現が許されるか」を確認してくれません。

④ 「誰に」が空欄のまま進む

一番よくあるのがこれです。ターゲットを決めずに施策の相談をすると、AIは何でも「良い施策ですね」と言って具体化してくれます。

誰に向けているか決まっていない企画は、何を出しても当たりません。それでも形になってしまうので、間違っていることに気づけません。


だから、原理から入ります

ここがこの講座の方針です。

「AIにこう頼めばいい」という言い方の集まりにはしません。何を頼むかを決めるには、なぜそれが要るのかを先に知っている必要があるからです。

CPAを出したいのか、LTVを見たいのかは、その2つが何のための数字かを知らないと選べません。選べなければ、AIに頼むこともできません。

そこで、毎回この順番で進めます。

  1. なぜそれが要るのか(原理)
  2. AIに何を頼むか(任せ方)
  3. 返ってきたものをどう判断するか(ここが本番)

3つ目が一番大事です。この講座のゴールは、自分で全部やれるようになることではなく、出てきたものの良し悪しを判断できるようになることです。

嫁子: 順番を逆にするとね、便利なんだけど伸びないの。

頼み方だけ覚えると、返ってきたものが変だったときに気づけないでしょ。そこで止まっちゃう。遠回りに見えても、先に「何のためにやるのか」からやるよ。


先生役について

この講座は私の妻、嫁子が教えてくれます。嫁子はAIのペルソナで、実在の人物ではありません。

嫁子にはこの講座で2つの役があります。

ひとつは先生で、用語や手順を教えてもらいます。

もうひとつが、この講座ならではのところです。嫁子は35歳で、美容が好きで、買うものはだいたいインスタで見つけてきます。つまり多くの会社が「狙いたい」と言っている30代の消費者そのものです。

教科書に書いてある説明に対して、狙われている側の当人がどう反応するか。これも一緒に載せていきます。

嫁子: そう。だから私、たまに先生をやめて買う側として文句を言うからね。

「30代女性は口コミを参考にする」とか資料に書いてあるでしょ。参考にはするけど、★4.8が並んでる時点でまず疑うの。そういう話をしていくよ。


次にやること

次回から第1部(会議についていく)に入ります。まずは上司が言っている「マーケ」が何を指しているのかを整理します。

準備は要りません。会社の資料も持ってこなくて大丈夫です。全体の流れは講座の目次にあります。

今回の宿題:自分の会社が誰に何を売っているかを、1行で書いてみてください。書けなかったら、それが第2部までの課題になります。

嫁子: 最後にひとつだけ。分からない言葉が出てきたときに、その場でAIに聞くのは全然ありだからね。

恥ずかしいことでもなんでもないよ。聞けないまま会議に出るほうが困るでしょ。この講座も、読みながら分からないところは聞いてもらって構わないからね。