【第2回】会議で飛び交う略語の地図を持つ|KPI・CV・CPA・LTV・ROAS(嫁子が教えるマーケ講座)

今回のゴール

第1回で部署の範囲を確認したので、今回は言葉のほうを片づけます。全体の流れは講座の目次へ。


嫁子: 用語集を頭から暗記しようとすると、たぶん3日で挫折するよ。

略語は覚えるものじゃなくて、どこの数字かを見る地図なの。今日は1本の流れに全部並べてみるね。


1. 用語は「1本の流れ」の上に並んでいる

バラバラに覚えるから混乱します。実際には、お客さんが来てから買うまでの流れのどこを見ているかが違うだけです。

この講座では、私の勤務先を例にします。家の掃除を請け負うハウスクリーニングの会社で、Web広告で問い合わせを集め、営業が見積もりに行って契約する、という流れです。

流れはこうなります。

広告が表示される
   ↓  ここを見るのが CTR
クリックされる
   ↓  ここを見るのが CVR
問い合わせが来る(これが CV)
   ↓  ここを見るのが 成約率
契約になる
   ↓  ここを見るのが LTV
2回目、3回目と続く

言葉が指しているのは、この矢印のどこかです。


2. まず CV(コンバージョン)

CVは「してほしいことをしてくれた件数」です。日本語では成果地点と言ったりします。

何をCVにするかは会社が決めます。ここが分かっていないと話が噛み合いません。

CVの置き方 何を数えるか
問い合わせ フォーム送信や電話の件数
資料請求 ダウンロードされた回数
購入 実際に売れた件数

うちの会社は「問い合わせ」をCVにしています。契約はそのあと営業が取るので、マーケ部の数字は問い合わせまでです。

「CVが増えました」と報告するとき、何をCVと呼んでいるかが共有されていないと、褒められも怒られもします。第1回で範囲を確認したのは、このためでもあります。


3. 割合を見る3つ(CTR・CVR・成約率)

どれも割り算で、上の流れの隣り合う2つを比べているだけです。

略語 何割か 計算
CTR 表示のうちクリックされた割合 クリック数 ÷ 表示回数
CVR クリックのうちCVになった割合 CV数 ÷ クリック数
成約率 CVのうち契約になった割合 契約数 ÷ CV数

大事なのは、どこが低いかで打つ手が変わることです。

CTRが低ければ広告の見せ方の問題で、CVRが低ければ着地したページの問題、成約率が低ければ問い合わせの質か営業側の問題になります。同じ「売れない」でも原因の場所が違います。

嫁子: これ、買う側からするとよく分かるよ。

広告が気になってクリックしたのに、開いたページに料金がどこにも書いてないと、そこで閉じるからね。それがCVRが低いってことでしょ。広告のせいじゃなくて、その先のせい。


4. 金額を見る3つ(CPC・CPA・CAC)

こちらは1件あたりいくらかかったかです。

略語 何の単価か 計算
CPC クリック1回の単価 広告費 ÷ クリック数
CPA CV1件の単価 広告費 ÷ CV数
CAC 顧客1人を獲得する費用 費用 ÷ 新規顧客数

CPAとCACは混同されがちですが、CPAは問い合わせ1件、CACは実際に客になった1人を指すことが多いです。うちのように問い合わせと契約が別なら、この2つは別の数字になります。

実際に計算してみます

ここから架空の数字を使います(本物の社内数字ではありません)。

項目 数字
広告費 30万円
表示回数 100,000回
クリック 2,000回
問い合わせ(CV) 40件
契約 10件
平均単価 3万円

順番に出します。

問い合わせ1件を7,500円で買っていて、契約1件に直すと3万円かかっている、ということです。


5. ROASとROI(ここを間違えると事故ります)

ROASは、かけた広告費に対して売上がいくら返ってきたかです。

上の例だと、売上は 10件 × 3万円 = 30万円。広告費も30万円なので、ROASは100%です。

ここで「トントンですね」と報告すると事故ります。

ROASは売上で見ているので、原価が引かれていません。掃除の仕事は人が動くので、仮に粗利が半分だとすると、手元に残るのは15万円です。広告に30万円かけているので、実際は15万円の赤字です。

一方のROIは利益で見ます。

同じ状況でROIを出すと(15万 − 30万)÷ 30万 = マイナス50%。同じ現実を、まったく違う顔で見せてきます。

ROASが良い数字に見えるときほど、粗利率を聞いてから喜ぶこと。これは最初の1か月で一度やらかしました。


6. LTV(ここで話がひっくり返る)

ここまでだと「この広告は赤字だからやめよう」で終わります。でもまだ見ていない数字があります。

LTVは、1人のお客さんが取引の最後までに落としてくれる金額です。計算の仕方はいくつかありますが、単純な出し方だとこうなります。

ハウスクリーニングは1回で終わる仕事ではありません。エアコンを頼んだ人が、年末に水回りも頼む、ということが起きます。

仮に年2回、3年続くとすると、3万円 × 2回 × 3年 = 18万円。粗利半分なら9万円が手元に残ります。

CACが3万円なので、1年目は赤字でも、続けて使ってもらえれば十分に合っていることになります。

見る数字 判定
ROAS(1回の売上で見る) 100%=実質赤字
LTV(続く前提で見る) 9万円の粗利に対し3万円の獲得費=合う

同じ広告が、見る数字によって失敗にも成功にもなります。どちらが正しいかではなく、うちのお客さんは実際に2回目を頼んでいるのかを確かめる必要がある、ということです。

嫁子: 頼むよ、2回目。1回目が良かったらね。

でも正直に言うと、次に使うときに前回の担当者を指名できるかは大きいよ。同じ値段でも、誰が来るか分からない会社にはもう一度頼みにくいの。LTVを伸ばしたいなら広告じゃなくてそこだと思う。


7. KGIとKPI

最後に、会議で一番よく出る2つです。

KGIが最終的に達成したい数字(年間売上など)で、KPIはそこへ向かう途中で見る数字(問い合わせ件数など)です。

KGIは1つで、KPIは複数あります。「今期のKPIは?」と聞かれているのに売上を答えると話が噛み合いません。

どうやってKPIを決めるかは第19回でまとめて扱います。今は「ゴールと、途中の目印」くらいで十分です。


8. AIに任せるとき

用語の意味を聞くのはAIが得意な仕事です。「CPAとCACの違いを教えて」で正確な答えが返ってきます。

任せてはいけないのはうちの数字を入れた判断のほうです。

たとえば「CPA 7,500円は高いですか」と聞くと、業界平均のような話が返ってきます。それらしく見えますが、出典のない相場は会議で使えません(はじめにの②です)。

高いか安いかは、自社のLTVと粗利率が分かって初めて言えます。順番はこうです。

  1. 自社の平均単価・粗利率・リピート率を調べる
  2. その数字をAIに渡す
  3. 計算と、見落としの指摘をさせる

3つ目は実際に役立ちます。粗利を引き忘れていると指摘してくれることがあります。


つまずきポイント

「CV」が何を指すかは会社ごとに違います。 問い合わせなのか契約なのかを、最初に確認してください。

ROASとROIを混ぜないこと。売上ベースか利益ベースかで、黒字にも赤字にも見えます。

LTVの計算式は1つではありません。解約率から出す方法もあります。社内で使われている出し方に合わせるのが先で、自分の流儀を持ち込むのは後です。


今回のまとめ


次にやること

次回はどこまでAIに任せ、どこから自分で決めるかを整理します。第1部の最後で、この講座の使い方そのものの話です。

今回の宿題:自社の平均単価と、リピート率を調べてみてください。LTVの話は、この2つが分からないと一歩も進みません。

嫁子: 今日の内容で1つだけ持って帰るなら、数字を出した人に「それ、何で割った数字?」と聞けることだと思う。

分母が違うだけで、同じ現実が良くも悪くも見えるからね。聞くのは失礼じゃなくて、仕事だよ。