【第3回】どこまでAIに任せ、どこから自分で決めるか|この講座の使い方(嫁子が教えるマーケ講座)
今回のゴール
- AIに任せていい仕事と、渡してはいけない仕事の線が引ける
- 返ってきたものを点検する4つの質問を持てる
- なぜこの講座が毎回「原理」から始まるのかが分かる
第1部の最後です。第1回で部署の範囲を、第2回で用語を押さえました。全体の流れは講座の目次へ。
嫁子: 今日は道具の使い方の回だね。
先に結論を言っておくと、AIに渡していいのは材料までで、決めるのはあなたなの。理由をちゃんと説明するね。
1. 線はどこに引くのか
実際に1か月やってみて、はっきり分かれました。
| 任せていい | 自分で決める |
|---|---|
| 用語や仕組みの説明 | 誰に売るか |
| 情報の整理・要約 | いくらで売るか |
| 資料や文案の下書き | どの施策をやるか |
| 計算と検算 | 出していいかどうかの判断 |
| 見落としの指摘 | 数字を信じるかどうか |
線の引き方は1つです。取り返しがつくかどうかで分けます。
下書きが気に入らなければ捨てればいいだけですが、広告を出してしまえば取り消せませんし、価格を下げれば元に戻すのは簡単ではありません。取り返しがつかない側は、人が決めるということです。
2. なぜ判断を渡してはいけないのか
AIが賢くないからではありません。理由は2つあります。
① 責任の所在が動かない
広告の表現で問題が起きたとき、「AIが書きました」は通りません。出したのは会社で、確認したのはあなたです。
責任が自分に残るものは、自分で分かってから出すしかありません。
② AIは「止める理由」を自分から出しにくい
これは使っていて一番驚いたところです。
施策を相談すると、ほとんどの場合「良いと思います」から始まります。無理のある企画でも、頼めば実行計画まで作ってくれます。
はじめにで書いた④がこれでした。誰に向けているかが空欄でも、形だけは立派なものができあがります。
嫁子: 相づちを打ってくれる相手に相談すると気持ちいいんだよね。
でも気持ちよくなってる時点で、その企画は誰にも止められてないでしょ。私が横で文句を言うのはそのためだよ。
3. 頼み方より、渡し方
プロンプトの上手さより、効くのは手元にある材料を渡しているかです。
第2回のCPAの話がそのままの例になります。「CPA 7,500円は高いですか」だけでは一般論しか返りませんが、次を渡すと答えが変わります。
- 平均単価と粗利率
- リピートの有無と回数
- 問い合わせから契約になる割合
- 社内で使っているCVの定義
渡した瞬間に「LTVで見れば合っていますが、2回目の利用率を確認してください」のような、使える答えになります。
渡せる材料を持っていないことが、そのままAIの答えの薄さになります。この講座が毎回「原理」から入るのは、何を渡せばいいかを自分で分かるようにするためです。
4. 返ってきたものを点検する4つの質問
そのまま出す前に、この4つを通してください。1分で終わります。
① この数字の出どころはどこか
出典のない数値が混ざります。市場規模、平均CVR、業界の相場。自分で確かめられない数字は、資料から外すのが安全です。
② これはうちの前提で成り立つか
第1回でやった範囲の話です。価格を動かせない部署に「値下げして検証しましょう」と書いてあっても実行できません。
③ 誰に向けた話になっているか
ターゲットが書かれていない提案は、だいたいどこかで破綻します。「誰に」が空欄なら、そこを埋めてから読み直します。
④ この表現は出して大丈夫か
「No.1」「必ず」「最安」のような言い切りが紛れ込みます。使い方によっては法律に触れるので、第25回以降で詳しく扱います。ここでは言い切りの表現を見たら止まると覚えておいてください。
嫁子: ④は本当に気をつけてね。
買う側から見るとね、「業界No.1」って書いてある広告、もう誰も信じてないよ。何の1位なのか書いてないから。法律の前に、効いてないの。
5. この講座の進み方
毎回この順番で進みます。
- なぜそれが要るのか(原理)
- AIに何を頼むか
- 返ってきたものをどう判断するか
なぜ原理を先に置くかというと、2と3が、1を知らないと実行できないからです。
CPAを出すべき場面なのか、LTVを見るべき場面なのかは、両者が何のための数字かを知らないと選べません。選べなければ頼めませんし、返ってきたものが妥当かも分かりません。
頼み方だけを覚えると、外れたときに気づけないまま進みます。遠回りに見えますが、こちらのほうが早く着きます。
つまずきポイント
AIの答えを疑いすぎても進みません。用語の説明や計算、下書きは素直に任せてください。疑うのは、判断と数字と表現の3つで十分です。
社外に出せない情報を渡さないのは、この講座の範囲外ですが重要です。顧客名簿や未公開の売上を貼る前に、会社の規定を確認してください。
AIが出した施策が全部だめ、という話でもありません。判断材料としては優秀です。決める側に立つのが自分だ、というだけのことです。
今回のまとめ
- 線引きは「取り返しがつくかどうか」。つかない側は人が決める
- 判断を渡せない理由は、責任が動かないことと、AIが止める理由を出しにくいこと
- 効くのはプロンプトの上手さより、手元の材料を渡しているか
- 出す前に4つの点検(出どころ・前提・誰に・表現)
- 原理を先に置くのは、何を頼めばいいかを自分で決められるようにするため
次にやること
第1部はここまでです。次回から第2部(誰に売るかを決める)に入り、まずは「全員に売る」がなぜ売れないのかを扱います。
第2部では嫁子が先生と、狙われている側の当人の両方をやります。教科書の説明に当人が反論する回があるので、そこが一番面白いところだと思います。
今回の宿題:直近でAIに作らせた資料を1つ開いて、4つの質問を通してみてください。①で引っかかる数字が、たぶん1つは見つかります。
嫁子: 第1部おつかれさま。ここまでは準備運動だよ。
次からが本番で、いきなり一番むずかしいところに行くからね。誰に売るか。これ、ほとんどの会社が決めきれてないところだよ。