【第6回】買う人が通ってきた道を書き出す|カスタマージャーニー(嫁子が教えるマーケ講座)
今回のゴール
- 買うまでの道のりを段階に分けて書き出せる
- どの段階で落ちているかを数字と突き合わせられる
- きれいな一本道に描いてしまう失敗を避けられる
第5回で人物像を作ったので、今回はその人が通る道を書き出します。全体の流れは講座の目次へ。
嫁子: 今日のは、やってみると意外と面白いよ。
ただし先に言っておくと、実際の買い物はこんなにきれいに進まないからね。そこを分かったうえで作るなら、役に立つの。
1. 何のために作るのか
カスタマージャーニーは、お客さんが困ってから買うまでに通る道を、段階に分けて書き出したものです。
なぜ作るかというと、第2回でやった数字と結びつけるためです。
CVRが低いとき、「広告が悪い」「ページが悪い」と当てずっぽうで直しても当たりません。道を段階に分けておけば、どの段階で人が消えているかを見に行けます。
営業でいうと、商談の進捗管理に近いものです。初回訪問・提案・見積・決裁のどこで止まっているかを見ますが、あれを会う前の世界でやると考えてください。
2. うちの場合の道のり
ハウスクリーニングだと、こうなります。
| 段階 | お客さんの状態 | 接点 |
|---|---|---|
| 気づく | 換気扇の汚れが気になっている | まだ何もしない |
| 調べる | 自分でやる方法を探す | 検索、動画 |
| あきらめる | 洗剤を買ったが落ちない | ここで数か月止まる |
| 探す | 業者を探しはじめる | 検索、地図アプリ、口コミ |
| 比べる | 2〜3社を見比べる | 各社のサイト、料金表 |
| 申し込む | フォームか電話 | 問い合わせ |
| 会う | 見積もり・作業 | 営業と作業員 |
3段目の「あきらめる」が入っているのがポイントです。教科書の型(認知→興味→比較→購入)には、この段階がありません。
実際には、ここが一番長いんです。困っていることには気づいていて、業者を探すまでに数か月かかります。
嫁子: そこ、本当にそう。私の場合は洗剤を買ったまま半年放置してたからね。
このとき私は業者を探してないの。「自分でやればできる」と思ってるから。だから業者の広告を見せられても、その時期はまったく響かないよ。
3. 段階ごとに、やることが違う
同じ人でも、段階によって欲しい情報が違います。ここを揃えてしまうのが一番多い失敗です。
| 段階 | 欲しいもの | 出すべきもの |
|---|---|---|
| 調べる・あきらめる | 自分でやる方法 | 自分でやる手順の記事(ここで売り込まない) |
| 探す | どこに頼めるか | エリア・対応内容 |
| 比べる | いくらか、失敗しないか | 料金表、作業前後の写真 |
| 申し込む | 手間が少ないこと | 入力項目を減らす |
「調べる」段階の人に料金表を見せても動きません。逆に「比べる」段階の人に掃除の手順を読ませても意味がありません。
自社でやる方法を教える記事を出すのは、一見すると損に見えます。ただし、あきらめた人が次に検索するときに思い出してもらえるので、うちでは効いています。
4. きれいな一本道に描かない
ここが今回の注意点です。
図にすると、どうしても左から右へ一本の矢印になります。ただし実際の買い物は、行ったり戻ったりします。
- 比べている途中で、また自分でやる方法を調べ直す
- 申し込もうとして、口コミをもう一度見に行く
- 一度離脱して、3か月後に戻ってくる
きれいな一本道を前提に設計すると、戻ってきた人の受け皿がなくなります。たとえば「料金表は比較段階の人向け」と決めて奥に置くと、申し込む直前に確認したい人が迷子になります。
段階は順番ではなく、状態だと考えてください。同じ人が行き来します。
嫁子: 私、申し込みボタン押す直前にもう1回口コミ見るよ。
あれ何なんだろうね。もう決めてるのに、最後にやっぱり確認したくなるの。だからその瞬間に口コミが見つからないと、手が止まっちゃうんだよね。
5. 数字と突き合わせる
道を書いたら、第2回の数字を当てはめます。ここまでやって初めて使えます。
| 段階 | 見る数字 |
|---|---|
| 探す | 検索の表示回数、地図での表示 |
| 比べる | サイトの訪問数、料金ページの閲覧数 |
| 申し込む | CVR、フォームの途中離脱率 |
| 会う | 成約率 |
うちで実際に並べてみると、料金ページまでは来ているのに、フォームで落ちていることが分かりました。
原因を探すと、フォームの入力項目が12個ありました。住所の番地まで最初に聞いていたのですが、見積もりを出すだけならエリアと汚れの種類で足ります。
どこが弱いかが分かって初めて、直す場所が決まります。分けていなければ、ここは見つかりませんでした。
6. AIに任せるとき
ジャーニーの下書きはAIが速いです。「ハウスクリーニングを頼む人の検討過程を段階に分けて」で、形のあるものが出てきます。
ただし、出てきたものにはほぼ確実に2つの偏りがあります。
ひとつはきれいすぎることで、迷いや停滞が入りません。うちの「あきらめる」に当たる段階は、まず出てきませんでした。
もうひとつは前向きすぎることです。第5回と同じ理屈で、「情報を集めて比較検討する」という熱心な人物が前提になります。実際には、大半の時間は何もしていません。
なので使い方はこうなります。
- AIに下書きを作らせる
- 自社の問い合わせ履歴と突き合わせる
- 止まっている期間と、戻ってくる動きを自分で足す
2番目の材料は営業部にあります。「問い合わせの電話で、みなさん最初に何と言いますか」と聞くと、道の入口が分かります。
つまずきポイント
作って満足しないこと。 ジャーニーマップは作った時点では何も生みません。数字を当てはめて、弱い段階を見つけるまでが作業です。
段階を細かく分けすぎると使えなくなります。5〜7段階で十分です。
BtoBの場合は「誰の道か」を先に決めてください。 使う人と決裁する人が違うので、1本にまとめると破綻します。
今回のまとめ
- ジャーニーは、どの段階で人が消えているかを見に行くための地図
- 教科書の型に入っていない「あきらめて止まっている期間」が実際は一番長い
- 段階ごとに欲しい情報が違う。調べている人に売り込まない
- 一本道に描かない(同じ人が行き来する)
- 書いたら第2回の数字と突き合わせる。そこまでやって使える
- AIの下書きは、きれいすぎ・前向きすぎ。停滞と出戻りを自分で足す
次にやること
次回は「欲しい」の下にある本音を掘る回です。今回の道のりの中で、お客さんが口に出さない理由を扱います。
今回の宿題:自社のジャーニーを5段階で書いて、各段階の数字が取れるかどうかを確かめてください。取れない段階が見つかったら、それが計測の課題になります。
嫁子: 今日のを1つだけ持って帰るならね、待ってる時間があるってことだと思う。
お客さんはずっと探してるわけじゃないの。困ってるけど動いてない時期が、たぶん一番長いよ。そこに何を置いておくかで、思い出してもらえるかが決まると思う。