【第24回】どれからやるか、どこでやめるか|優先順位と撤退判断(嫁子が教えるマーケ講座)

今回のゴール

最後の第6部に入ります。第5部で判断の材料が揃ったので、ここからは進め方と、やってはいけないことです。全体の流れは講座の目次へ。


嫁子: 今日から最後の部だね。

始めることより、やめることのほうが難しいの。会社だとなおさらだから、そこを先に決めておく話だよ。


1. やることが多すぎる

第12回で7Pを並べたとき、弱いところが4つ見つかりました。

第14回以降で他にも課題が出てきて、やることの候補は10個を超えました。全部はできません。

そこで順番を決めます。


2. 効果と手間の2軸で並べる

判断の軸は2つで足ります。

軸 見るもの
効果 第19回のKPIツリーで、どこにどれだけ効くか
手間 金・時間・人。社内調整の重さも含む

うちの4つを並べるとこうなりました。

やること 効果 手間 順番
写真を増やす 中 小(今日から撮れる) 1
24時間フォームを置く 大 小〜中 2
出す内容を決める 中 中 3
担当者の質を揃える 大 大(研修が要る) 4

1番目は効果が最大ではありません。それでも先にやります。手間が小さくて、すぐ結果が見えるからです。

異動してきたばかりの立場では、ここが実は重要です。小さくても早く出た結果が、次の予算を通す材料になります。効果が最大のものだけを狙って半年かかると、その間に信用が積み上がりません。

嫁子: それ、家のことでも同じだと思う。

大掃除の計画を立てるより、今日玄関だけ片づけたほうが続くでしょ。片づいた場所が見えると、次もやる気になるからね。


3. やめる基準を先に決める

ここが今回の本題です。

第16回で「始める前に判断の条件を決めておく」と書きました。第23回でも同じことを書きました。3回目です。

繰り返すのは、これが守られないからです。

始めるときは誰も終わりの話をしません。うまくいかなくなってから「そろそろ止めるか」の相談が始まり、そこで揉めます。

決めておくのは3つです。

  1. いつ判断するか(3か月後、クリック500回後、など)
  2. 何がどうなっていたら続けるか(CPAが1万円以下、など)
  3. 誰が決めるか

3番目を抜かすと、誰も決められません。判断する人を先に指名しておいてください。

紙に1行書いておくだけで十分です。

この施策は、3か月後にCPAが1万円を超えていたら止める。判断は◯◯が行う。


4. なぜ、やめられないのか

決めていても、実際にその時が来ると止められません。理由は3つあります。

かけた費用がもったいない。 50万円使った施策を止めると、その50万円が無駄になった気がします。ただしその50万円は、止めても続けても戻ってきません。判断に使うべきなのは、これから先に出す金です。

言い出した人の面子。 自分が提案した施策を止めるのは気が重いものです。だから3節の「誰が決めるか」を、提案者以外にしておくと楽になります。

もう少しで効きそうに見える。 第22回の振れ幅の話です。たまたま良かった週を見て「上向いてきた」と判断してしまいます。

止める判断は、止める理由を探すのではなく、決めた条件に当てはまるかだけを見てください。

営業から来た人には、ここは慣れているかもしれません。見込みのない案件を追い続けないというのは、営業では当たり前の判断です。同じことを施策でやるだけです。


5. 止めたものを記録する

止めた施策は、記録に残してください。書くのは3行で足ります。

何をやったか/どれくらいやったか/なぜ止めたか

理由は2つあります。

同じことを繰り返さないため。 人が入れ替わると、3年前に失敗した施策がまた提案されます。記録があれば「前回はこの条件で止めた」と言えます。

次の判断が速くなるため。 「前回は3か月で判断した」という前例があると、次も同じ基準で始められます。

第23回で「負けた案も記録してください」と書いたのと同じです。失敗の記録は、社内にしかない資産です。


6. AIに任せるとき

並べ替えと比較表の作成には使えます。「この10個を効果と手間で分類して」で形になります。

任せてはいけないのは、手間の見積もりです。

「24時間フォームを置く」の手間は、会社によってまったく違います。既存のサイトに1ページ足すだけの会社もあれば、社内の承認に3か月かかる会社もあります。社内調整の重さは、AIには分かりません。

使える頼み方はこうです。

  1. やることの一覧と、自分がつけた手間の見積もりを渡す
  2. 効果の推定を第19回のツリーに沿って出させる
  3. 「この順番で進めた場合、最初の成果が出るのはいつか」と時系列に並べさせる

3番目が実用的です。上司に説明するときの資料になります。


つまずきポイント

同時に3つ以上進めないでください。 第23回と同じで、何が効いたのか分からなくなります。

効果が大きいものから手をつけないでください。手間も大きいことが多く、最初の成果が出るまでに時間がかかりすぎます。

止めた施策を「失敗」と呼ばないほうが、記録が残りやすくなります。「条件に達しなかったので止めた」で十分です。


今回のまとめ


次にやること

次回から法律の回が3つ続きます。まずは盛った一言で会社が飛ぶで、景品表示法を扱います。ここからの3回は、知らないと会社に実害が出る範囲です。

今回の宿題:いまやろうとしている施策を1つ選んで、やめる基準を1行で書いてみてください。書けなければ、まだ始めるべきではありません。

嫁子: 最後に4節の話ね。あれ、買い物でもあるよ。

高い化粧品を買っちゃって、合わないのに使い続けるやつ。もったいないから使うんだけど、合わないものを使い続けるほうが、実は損なんだよね。