【第16回】お金で流入を買うということ|運用型広告(嫁子が教えるマーケ講座)

今回のゴール

第15回の検索は時間がかかりました。今回はその逆で、すぐ出る代わりに金がかかるほうです。全体の流れは講座の目次へ。


嫁子: 広告の話は、買う側からすると「見せられる側」の話だから、あんまり気持ちのいいものじゃないの。

でもちゃんと欲しいときに出てくる広告は、普通にありがたいよ。問題は、そうじゃないときに出てくることだね。


1. 運用型とは何が「運用」なのか

昔の広告は、枠を買うものでした。この雑誌のこのページを、いくらで。出したら終わりで、途中で変えられません。

運用型は違います。出しながら、毎日変えられます。

枠を買う広告 運用型広告
買うもの 場所と期間 クリックや表示
途中の変更 できない できる
費用 先に決まる 使った分だけ
止める 契約期間まで無理 いつでも止まる

営業から来た人には、これは分かりやすい違いだと思います。訪問しながら話し方を変えられるのが運用型で、送った提案書がそのまま届くのが枠買いです。

止められるのは大きな利点です。効かないと分かった時点で止めれば、損失はそこで止まります。


2. 値段は入札で決まる

ここが仕組みの中心です。

同じ検索語に複数の会社が広告を出したいとき、表示する順番をオークションで決めています。

ただし、単純に高い金額を出した会社が勝つわけではありません。いくら出すかと、広告の質の掛け算で順番が決まります。

会社 出せる金額 広告の質 結果
A社 300円 低い 負けることがある
B社 200円 高い 勝つことがある

広告の質というのは、ざっくり言えばクリックされるか、クリックした人が満足するかです。検索語と広告文がずれていたり、着地したページに求めているものが無いと、質は下がります。

つまり同じ金額でも、内容が合っていれば安く買えるということです。

ここが第13回とつながります。薄いコピーはクリックされないので、結果として単価が上がります。


3. いくらまで出せるか

広告の相談で最初に聞かれるのが「予算はいくらですか」です。ここで根拠なく答えないでください。

計算は第2回でやったものを使います。うちの架空の数字だとこうです。

項目 数字
平均単価 3万円
粗利率 50% → 1万5千円
問い合わせから契約になる割合 25%

契約1件から1万5千円の粗利が出ます。ということは、契約1件を獲るのに1万5千円までなら赤字になりません(利益はゼロですが)。

契約1件には問い合わせが4件必要(25%なので)。つまり問い合わせ1件あたりの上限は3,750円です。

ここから逆算します。

許容CPA 3,750円 × CVR 2% = クリック単価の上限は75円

実際のクリック単価が150円なら、この条件では合いません。打ち手は3つです。

  1. CVRを上げる(着地ページを直す)
  2. 成約率を上げる(営業側の話)
  3. LTVで見る(第2回でやった「2回目があるか」)

3番目が現実的な答えになることが多いです。リピートが確認できているなら、1回目が赤字でも成立します。ただし確認していないなら、それは願望です。


4. 効果を見るには件数が要る

広告を1週間出して「効きませんでした」と報告するのは早すぎます。

理由は単純で、件数が少ないと、ただの偶然と区別がつかないからです。

クリックが100回でCVが2件だったとして、CVRは2%です。ただしこの2件が3件になればCVR 3%、1件なら1%になります。たった1件の差で、数字が1.5倍にも半分にもなります。

どれくらい必要かは統計の話になるので、第23回(ABテスト)で扱います。ここでは判断できる件数が貯まるまで、判断を保留するとだけ覚えてください。

先に決めておくと揉めません。

この広告は、クリック500回か3週間のどちらか早いほうまで回してから判断する

始める前にこれを合意しておくと、2週目に「効いてないから止めよう」と言われたときに説明できます。

嫁子: それ、社内向けにすごく大事そうだね。

決めておかないと、うまくいってないときに感情で止めることになるでしょ。


5. 止めた瞬間に消える

検索との一番大きな違いです。

第15回で書いた記事は、公開したあとも残り続けます。広告は支払いを止めた翌日にゼロになります。

これは欠点ではなく性質なので、そう考えて使い分けます。

使う場面 理由
今月の数字が要る すぐ出る
新しいメニューを試したい 反応が早く分かる
繁忙期だけ増やしたい すぐ増減できる
長期の土台を作りたい 向かない(検索のほう)

広告だけに依存すると、止められない状態になります。売上が広告に紐づいているので、下げると落ちます。だから第14回で書いた通り、複数のチャネルを持つ必要があります。


6. AIに任せるとき

広告文の案出しは得意です。第13回の点検を通す前提で、20案出させるのは実用的です。

危ないところが2つあります。

ひとつは単価や相場を聞かないことです。第11回と同じで、出典のない数字が返ってきます。実際の単価は管理画面に出るので、そちらが一次情報になります。

もうひとつは、広告表現の可否を判断させないことです。「この広告文は問題ないか」と聞くと、それらしい答えが返りますが、根拠は確認されていません。「No.1」「最安」「必ず」は法律に関わるので、第25回で扱います。判断は自分と、必要なら法務です。

使える頼み方はこうです。

  1. 第13回の材料(ペルソナ・インサイト・禁止語)を渡して案を量産させる
  2. 管理画面から実数を渡して、CPAとCVRの計算を検算させる
  3. 3節の逆算を一緒に確認させる(粗利の引き忘れを拾ってくれます)

つまずきポイント

着地するページを先に直してください。 広告だけ良くしても、行った先が第14回の「電話のみ」なら落ちます。

クリック単価だけ見ないでください。安く買えていても、CVにならなければ意味がありません。見るのはCPAです。

予算を使い切ることを目的にしないでください。余ったら止めていいものです。


今回のまとめ


次にやること

次回は「バズらせる」を目標にしないです。SNSを扱いますが、嫁子がインスタを毎日見ている当人なので、かなり率直な回になると思います。

今回の宿題:自社の粗利率と成約率から、許容CPAを1つ計算してみてください。3節の3行をなぞるだけです。この数字を持っていると、代理店との話が変わります。

嫁子: 最後に買う側からひとつ。同じ広告を何回も見せられるの、逆効果だよ。

一度見て興味がなかったものを5回見せられると、その会社の名前ごと嫌になるの。表示回数の上限、たぶん設定できるはずだから見てみてね。