【第13回】AIが書いたコピーが薄くなる理由|メッセージ(嫁子が教えるマーケ講座)

今回のゴール

第3部の最後です。第9回から第12回までで決めたことを、言葉にします。全体の流れは講座の目次へ。


嫁子: 今日は私、また当人として文句を言う回だよ。

だってコピーって、買う側が一番たくさん読まされてるものでしょ。いいも悪いも、判断はこっちがしてるからね。


1. まず実際に書かせてみる

ここまでの材料をAIに渡して、広告の見出しを作らせました。返ってきたのがこれです。

あなたの毎日に、もっとゆとりを。プロの技術で、住まいに輝きを取り戻します。

悪くは見えません。会議に出しても、たぶん誰も止めません。

ただし第9回の点検を通すと落ちます。商品名を隠したら、何の広告か分かりません。ハウスクリーニングでも、リフォームでも、洗剤でも成立します。

嫁子に見せました。


嫁子: これ読んで思うのはね、何も言ってないってこと。

「ゆとり」も「輝き」も、誰も反対できないことしか言ってないでしょ。反対できないことって、情報がゼロなんだよ。

あと「あなたの毎日に」って呼びかけられると、急に広告だと分かってページを閉じるの。そこで身構えちゃうんだよね。


2. 薄くなる3つの原因

嫁子の反応を分解すると、原因は3つあります。

① 全員に向けて書いている

第4回でやった話がそのまま出ます。「あなたの毎日」は誰にでも当てはまるので、誰のことでもありません。

② 反対できないことを言っている

「ゆとりがある暮らしは良い」に反論する人はいません。反論の余地がない文は、情報を持っていません。

逆に「立ち会いは要りません」は、立ち会いたい人には合いません。合わない人がいる文にだけ、情報があります。

③ 具体的な物が消えている

第9回の「抽象度を上げすぎる」失敗です。換気扇も、油も、時間も出てきません。

この3つは全部、同じ直し方で直ります。具体を1つ入れることです。


3. 直したもの

同じ材料で書き直しました。

半年放置した換気扇の油、3時間かけても落ちませんでした。うちが2時間でやります。立ち会いは要りません。

比べると、変わったのは3つです。

前 後
相手 あなた(全員) 換気扇を放置している人
中身 ゆとり・輝き 半年・3時間・2時間・立ち会い不要
反論 できない 「自分は落とせた」と言える

3行目が大事です。反論できる文のほうが、届く相手には強く届きます。

数字が4つ入っていますが、第5回のペルソナと第7回のインサイトから出てきたものばかりで、思いつきではありません。


4. 訴求は1つに絞る

うちのベネフィットは3つありました(留守対応・総額確定・片づけ不要)。

最初、3つとも書きました。結果は3つとも伝わりませんでした。

読む側は広告を1秒も真面目に読んでいないので、3つ並べると全部が等しく薄まります。第7回で「インサイトは1つに絞る」と書いたのと同じ理屈です。

選び方は1つです。その人が申し込まない一番大きな理由を、1つ潰します。

うちの場合、失注理由で最も多かったのは立ち会いでした。だから見出しは立ち会い1本にして、残り2つは本文とページの下に置きました。消すのではなく、順番をつけるということです。

嫁子: 順番つけてくれると助かるよ。

全部同じ大きさで書いてあるとね、どれが一番の売りなのか分からないの。選べないから、結局ページを閉じちゃう。


5. 当人が読むと寒くなる表現

ここは嫁子に任せます。

嫁子: 買う側として、見るとちょっと引くやつを挙げるね。

「〜でお悩みのあなたへ」。悩んでるほどじゃない場合に、勝手に深刻にされてる感じがするの。

「実は、〜なんです」。別に実はでもなんでもないでしょ。もったいぶられると疲れるよ。

「〜しませんか?」。しませんかって聞かれても、こっちは検討してる最中なんだよね。急かされてる感じがする。

「業界初」「No.1」。はじめにでも言ってたけど、何の1位なのか書いてないものは、もう誰も読んでないよ。

共通してるのはね、書いてる側の都合が透けて見えるってこと。売りたい気持ちが先に出てると、読む前に閉じるの。

「No.1」については、読まれないだけでなく法律上の問題もあります。第25回で扱います。


6. AIに任せるとき

コピーの量産はAIが得意です。20案出させて選ぶ、という使い方が現実的です。

そのままだと1節のようなものが出るので、渡し方と点検を決めておきます。

渡すもの

  1. 第5回のペルソナ(行動で書いたもの)
  2. 第7回のインサイト1つ
  3. 失注理由の上位3つ
  4. 禁止語(心・豊か・上質・ゆとり・輝き・あなたの毎日)

点検(3つ通します)

この3つを通すだけで、20案のうち15案くらいは落ちます。残ったものから選べば、大きく外しません。

もう1つ、AIには自分で書いたコピーの点検もさせられます。「この文に反論の余地はあるか」と聞くと、無いときは「一般的に受け入れられる内容です」と返ってきます。それが薄いという意味です。


つまずきポイント

社内で通りやすいのは、薄いほうです。 「ゆとり」は誰も反対しませんが、「半年放置した換気扇」は「品がない」と言われることがあります。効くのは後者です。

数字を入れるときは、根拠のあるものだけにしてください。「満足度98%」は、調査していなければ書けません(第25回で扱います)。

コピーはターゲットごとに書き分けます。1本で全部をまかなおうとすると、1節に戻ります。


今回のまとめ


次にやること

第3部はここまでです。何を売るかが決まったので、次回から第4部(どこで出会うかを決める)に入り、まずは出会う場所を地図にするところから始めます。

今回の宿題:自社のトップページの見出しから商品名と社名を隠して、何の会社か分かるか読んでみてください。分からなければ、そこが今回の課題です。

嫁子: 第3部おつかれさま。ここまででね、誰に何を売るかは全部決まったの。

決まってないまま広告を出すと、1節のやつになるからね。言葉が薄いのは、書き方が下手なんじゃなくて、決めてないだけのことが多いよ。