【第25回】盛った一言で会社が飛ぶ|景品表示法(嫁子が教えるマーケ講座)

今回のゴール

ここから法律の回が3つ続きます。全体の流れは講座の目次へ。

この回の内容は2026年9月時点のものです。 制度は変わるので、実際に判断するときは消費者庁のページで最新を確認してください。判断に迷ったら法務か、社外の専門家に相談してください。


嫁子: 今日から3回は、知らないと会社に実害が出る範囲だよ。

今までの回は「効かない」で済んだけど、ここからは違うからね。やったら罰金の話だよ。


1. 2種類だけ覚える

景品表示法で禁じられている不当表示のうち、広告に関わるのは主に2つです。

種類 何について 例
優良誤認表示 品質・中身 実際より著しく良く見せる
有利誤認表示 取引条件・値段 実際より著しく得に見せる

言い換えると、モノの話なら優良誤認、値段の話なら有利誤認です。

うちのハウスクリーニングで考えると、こうなります。

書いたこと 実際 どちら
「どんな油汚れも完全に落とします」 落ちないものもある 優良誤認
「通常価格5万円が今だけ3万円」 5万円で売った実績がない 有利誤認

2行目は二重価格表示と呼ばれるもので、実際に売っていない価格を「通常価格」として並べると問題になります。

「著しく」という言葉が入っているので、少しの誇張が全部違反になるわけではありません。ただしその線引きを自分で判断しないでください。迷ったら消してください。


2. 根拠を出せと言われることがある

効果や性能について表示したとき、消費者庁から根拠となる資料の提出を求められることがあります。

期限内に出せない場合、その表示は不当表示とみなされます。これを不実証広告規制といいます。

大事なのは順番です。書いてから根拠を探すのではなく、根拠がある範囲で書きます。

うちで実際にやった確認はこうでした。

「作業時間は約2時間です」 → 直近50件の作業記録を確認 → 平均1時間50分、最長3時間 → 「約2時間(現場の状況により前後します)」に修正

数字を出すなら、その数字がどこから来たかを説明できる状態にしてください。はじめにの②(AIが数字を作文する)が、ここで一番高くつきます。


3. 違反すると何が起きるか

金額で押さえておいてください。

課徴金は、対象となる商品やサービスの売上額の3%です。 対象期間は最大3年分。

うちの規模で考えてみます。月商が300万円で、問題のある表示を1年間出していたとすると、対象売上は3,600万円。その3%にあたる108万円が課徴金になり、3年分なら単純に3倍です。

さらに、2024年10月1日に施行された改正で2つ増えました。

追加されたもの 内容
直罰 優良誤認・有利誤認に対して100万円以下の罰金
課徴金の加算 10年以内に課徴金納付命令を受けたことがあると1.5倍

(消費者庁「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」・2026年9月時点)

金額以上に効くのが措置命令の公表です。会社名が出ます。第10回で作ったポジションも、第12回で積み上げた証拠も、ここで吹き飛びます。

罰金より、公表のほうが高くつきます。


4. 「No.1」を書いていい条件

第13回で嫁子が「何の1位なのか書いてないものは読まれない」と言いました。実は法律の面でも問題になります。

消費者庁は2024年9月26日に、No.1表示についての実態調査報告書を公表しています。そこで示されている考え方のうち、担当者として押さえるのは2つです。

比較の対象。 No.1を主張するなら、原則として主要な競合を比較対象に含める必要があります。都合のいい相手だけと比べた結果では根拠になりません。

満足度の調査方法。 「顧客満足度No.1」と書くなら、実際にその商品やサービスを利用したことがある人を対象に調査する必要があります。

報告書では、事業者のサイトへのリンクを並べて「イメージ」を尋ねた結果をもって「満足度No.1」と表示していた例が、客観的な調査とはいえないと指摘されています。

(消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」・2026年9月時点)

実務的な結論はこうなります。調査会社に頼んで「No.1」の表示を買う、という形の案内が来たら、まず調査の中身を確認してください。使ったのが自社でも、表示するのは自社です。

嫁子: これ、買う側からしても納得できる話だよ。

「No.1」って書いてあるのに、小さい字で条件が書いてあるやつ、あるでしょ。あれを見ると逆に信用しなくなるの。法律の前に、効いてないんだよね。


5. AIが書く危険な表現

はじめにの③で「AIは法律に触れる表現を平気で書く」と書きました。具体的に見ておきます。

広告文を作らせると、こういう言葉が混ざります。

出てくる表現 何が問題か
「業界No.1」 4節の条件を満たしているか不明
「完全に落とします」 落ちない場合があるなら優良誤認
「絶対に」「必ず」 例外があれば同じ
「通常価格◯円」 その価格で売った実績が必要
「満足度98%」 調査していないなら作文
「業界最安値」 全社を調べた根拠が必要

AIに悪気があるわけではなく、広告としてよく見る言い回しを学んでいるので、それを返しているだけです。

対策は2つです。

⚠️ AIに「この広告文は法的に問題ないか」と判定させないでください。それらしい答えは返ってきますが、根拠は確認されていません。第16回でも書いた通り、判断は自分と法務です。


6. 社内で持っておく仕組み

個人で気をつけるだけでは漏れます。3つ用意すると楽になります。

迷った表現を「たぶん大丈夫」で出さないこと。迷ったという事実自体が、確認すべき合図です。


つまずきポイント

「他社も書いている」は理由になりません。 その他社が指導を受けていないだけかもしれません。

打消し表示を小さく書かないでください。本文で強く言っておいて、注意書きで小さく打ち消す形は問題になります。

代理店が作った広告文も、出すのは自社です。 確認する責任は自社に残ります。


今回のまとめ


次にやること

次回は「PR」を書かないと違反になるです。2023年から規制が始まった、広告だと分からない広告の話をします。

今回の宿題:自社のサイトと広告文から、数字と断定表現を全部抜き出してください。そのうち根拠を1行で言えないものが、今日の課題です。

嫁子: 今日のはね、買う側としても歓迎してる話だよ。

だって盛った広告に引っかかるのは、こっちだからね。

でも一番かわいそうなのは、まじめにやってる会社が、盛った会社に負けることでしょ。だからこの法律があるんだと思うよ。