【第18回】一度買った人に戻ってきてもらう|CRMとメール(嫁子が教えるマーケ講座)
今回のゴール
- 既存客に向ける理由を数字で説明できる
- メールが読まれない原因が分かる
- 送る前に何を整えるかが分かる
第4部の最後です。第2回のLTVで「2回目があるか」と書いた話を、ここで回収します。全体の流れは講座の目次へ。
嫁子: 正直に言うね。私、メルマガほとんど読んでないよ。
でも全部が無駄かというと、そうでもないの。読むものと読まないものの差がはっきりしてるから、その話をするね。
1. CRMとは何を指しているのか
会議で出てくる「CRM」には2つの意味があります。
| 使われ方 | 指しているもの |
|---|---|
| 考え方として | お客さんとの関係を続けて、価値を高めていくこと |
| 道具として | 顧客情報を貯めて使うシステム |
「CRMを導入しよう」はシステムの話で、「CRMを強化しよう」は考え方の話です。どちらの意味で言われているかを確認してください。
ちなみに航空業界や医療でも CRM という略語が使われますが、まったく別のものです。社外の資料を読むときは注意してください。
2. なぜ既存客に向けるのか
理由は数字で説明できます。第2回と第16回の計算を使います。
うちの架空の数字では、契約1件を獲るのに3万円かかっていました(広告費30万円÷契約10件)。
一方、一度使った人にもう一度頼んでもらう場合はどうか。メールを送る費用はほぼゼロで、電話をかけても数百円です。
| 新規 | 既存 | |
|---|---|---|
| 1件獲るのにかかる費用 | 3万円 | 数百円〜 |
| 相手が知っていること | ゼロから説明 | もう知っている |
| 決めるまでの時間 | 比較に数日 | 短い |
2行目が地味に効きます。第6回のジャーニーで書いた「調べる・比べる」の段階を、既存客は飛ばします。
ただし前提が1つあります。1回目の体験が良かった場合に限るということです。悪ければ、連絡するほど逆効果になります。
第12回で「People(人)が弱い」と診断したのを思い出してください。そこを直さないまま再訪を促しても、効きません。
3. メールが読まれない原因
嫁子が「ほとんど読んでいない」と言った理由を、分解してみます。
嫁子: 読まない理由は3つあるよ。
① 自分宛てじゃないこと。 全員に同じ内容が送られてるのが分かるの。「季節の変わり目ですね」から始まるやつ、誰に向けて書いてるのか分からないでしょ。
② 今その話じゃないこと。 エアコン掃除を頼んだ翌週に「エアコン掃除はいかがですか」って来たことあるよ。今やったばっかりなんだよ。
③ 毎週来ること。 用がないのに毎週来ると、開かなくなるの。開かなくなったら、大事な連絡も届かないからね。
逆に読むものもあるよ。前回の作業から1年たったころに「そろそろ換気扇の時期です」って来たら、たぶん開く。自分のことだと分かるからね。
②が重要です。送る内容が間違っているのではなく、送るタイミングと相手が間違っています。
4. 送る前に、データを整える
嫁子の②を避けるには、誰が・いつ・何を頼んだかが分かっている必要があります。
うちの顧客名簿を見に行ったら、こうなっていました。
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 名前・住所・電話 | ある |
| 作業日 | ある(紙の台帳) |
| 何の作業をしたか | ⚠️ 一部しか残っていない |
| メールアドレス | ⚠️ 半分くらい |
つまり「1年前にエアコンを頼んだ人」を抽出できませんでした。これでは全員に同じものを送るしかなく、嫁子の①と②が起きます。
やることの順番はこうなります。
- 何を・いつ・誰にの3つが揃った記録を作る
- 抽出できる形にする(表計算でも最初は十分です)
- そのうえで送る
システムを買う前に、記録の取り方を直してください。道具を入れても、入れる中身が無ければ同じです。
5. 何を送るか
うちで考えたのは3種類です。売り込みは1つだけにしています。
| 種類 | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 確認 | 作業後の不具合の有無 | 作業の1週間後 |
| 役に立つ情報 | きれいな状態を保つ方法 | 数か月後 |
| 案内 | 前回と同じ時期の提案 | 前回から1年前後 |
3番目が嫁子の言っていた「そろそろの時期です」です。同じ内容でも、送る時期を変えるだけで受け取られ方が変わります。
1番目は売上に直結しませんが、第12回の People の問題を早く見つけられます。不満を言う機会を作っておくと、口コミに書かれる前に気づけます。
6. AIに任せるとき
文面の作成は使えます。特に、同じ案内を相手の状況別に書き分けるのは手作業だと大変なので、ここは向いています。
危ないところが2つあります。
🔴 顧客の個人情報をそのまま貼らないこと。 名前・住所・電話番号が入った表をAIに渡す前に、会社の規定を確認してください。これは第27回(個人情報保護法)で扱いますが、渡してしまってからでは戻せません。
送信を自動化しすぎないこと。 条件を設定して自動で送る仕組みは便利ですが、設定を間違えると全員に同じものが何度も届きます。最初は手動で送って、内容が固まってから自動にしてください。
使える頼み方はこうです。
- 個人情報を除いた条件だけ渡す(「前回エアコン・1年経過」のように)
- その条件に合う文面の案を出させる
- 送る前に、自分で1通読んで確認する
つまずきポイント
配信解除を分かりやすく置いてください。 見つけにくくすると、解除ではなく迷惑メール報告をされます。そうなると他の人にも届かなくなります。
開封率だけ見ないでください。見るのは、そこから申し込みが起きたかです。第2回の話と同じで、途中の数字は目的ではありません。
頻度は少なめから始めてください。増やすのは簡単ですが、一度嫌われると戻せません。
今回のまとめ
- CRMは考え方とシステムの2つの意味がある。どちらか確認する
- 既存客が安いのは、獲得費用と、説明の手間の両方が小さいから
- 前提として1回目の体験が良いこと。悪ければ連絡は逆効果
- 読まれない原因は、自分宛てじゃない・今その話じゃない・頻度が多い
- 🔑 システムを買う前に、記録の取り方を直す(何を・いつ・誰に)
- 同じ内容でも、送る時期を変えるだけで受け取られ方が変わる
- 🔴 顧客の個人情報をAIにそのまま渡さない(第27回で扱います)
次にやること
第4部はここまでです。次回から第5部(数字で判断する)に入り、ここまで出てきた数字を判断に使える形に組み直します。
今回の宿題:自社の顧客記録を見て、「1年前に何を頼んだ人」を抽出できるか確かめてください。できなければ、そこが第5部より前にやることです。
嫁子: 最後にひとつ。連絡が来ること自体はいやじゃないの。
忘れてるだけだからね。「そろそろですよ」って言われて初めて思い出すこと、けっこうあるよ。
いやなのは、こっちの状況を見てない連絡。そこだけ気をつけてくれれば、たぶん歓迎されると思う。