【第30回】1年後の自分に渡すもの|最終回(嫁子が教えるマーケ講座)
今回のゴール
- 30回で何ができるようになったかが分かる
- 次に困ったとき、どの回に戻ればいいかが分かる
最終回です。全体の流れは講座の目次にまとめてあります。
嫁子: おつかれさま。ここまで来たね。
最初の回で、あなたCPAとLTVが並んでる資料が読めなかったでしょ。今は両方とも、自分で計算して人に説明できるはずだよ。
1. 1年で変わったこと
営業部からマーケティング部に移って、最初に困ったのは資料が読めないことでした。
今も分からないことはたくさんあります。ただ、はじめにで書いた目標は達成できたと思っています。
AIに的確に指示して、返ってきたものを判断できるようになること
コピーも資料も分析も、実作業のかなりの部分はAIにやらせています。それでも困らなくなったのは、返ってきたものを止められるようになったからです。
2. 今なら、こう言えるはずです
AIが出してきたものに対して、こう言えるようになっていれば十分です。
- 「そのペルソナ、性格しか書いてない。行動で書き直して」(第5回)
- 「その数字、何で割ったもの?」(第2回・第22回)
- 「この件数だと、まだ判断できない」(第23回)
- 「その表現、根拠を出せる?」(第25回)
- 「この施策、いつやめるか決めた?」(第24回)
- 「商品名を隠しても、何の広告か分かる?」(第13回)
この6つです。全部「止める」側の言葉なのが、たぶん重要なところです。
AIは前に進める提案をいくらでも出します。止める判断だけは、こちらが持っていないと誰もやりません。
はじめにで「AIは止める理由を自分から出しにくい」と書きました。1年やってみて、ここが一番変わらなかった部分です。
3. 営業のやり方は、結局どうだったか
講座を通して、営業とマーケの違いを毎回持ち出してきました。最後にまとめます。
| 営業 | マーケティング | |
|---|---|---|
| 相手 | 目の前の1人 | 会ったことのない多数 |
| 修正 | その場で言い方を変えられる | 出した後は直せない |
| 結果 | 翌日には分かる | 数字が返るまで時間がかかる |
| 手柄 | 自分が取ったと分かる | 誰の成果か分からない |
通用しなかったのは道具で、身につけたものは全部使えました。
第28回で書いた通り、営業出身であることは終始有利に働きました。ペルソナが現実にいるかを判断できたのも、失注理由を聞いて回れたのも、第5回や第7回の材料が社内にあると知っていたからです。
異動は、持っているものを捨てる作業ではありませんでした。
4. どこに戻ればいいか
これから困ったときのために、地図を置いておきます。
| 困ったこと | 戻る回 |
|---|---|
| 会議の言葉が分からない | 第2回 |
| 誰に売るかが決まっていない | 第4回〜第8回 |
| 言葉が薄いと言われた | 第9回・第13回 |
| 値下げを求められた | 第11回 |
| 広告を出すか迷っている | 第16回 |
| 数字の報告で詰まった | 第19回〜第22回 |
| 効果があったか分からない | 第23回 |
| 表現が大丈夫か不安 | 第25回・第26回 |
| 営業部と噛み合わない | 第28回 |
第29回で書いた通り、この表自体も更新してください。制度も相場も変わります。特に法律の3回(第25回〜第27回)は、読み返すときに必ず最新を確認してください。
5. まだ分かっていないこと
正直に書いておきます。1年では届かなかったものがあります。
ブランドの作り方は分かりませんでした。 短期の数字は追えるようになりましたが、何年もかけて名前を覚えてもらう作業は、まだ手がついていません。
大きな予算の配分も未経験です。 月30万円の話はできても、桁が2つ上がったときに同じ考え方でいいのかは分かりません。
組織を動かす部分も弱いままです。 第28回で書いたのは、あくまで1人で動いた範囲の話です。
分かっていないことを、分かっていないと書けるようになったのは、第23回の効果だと思っています。
6. 最後に、AIとの付き合い方
この講座は「AIに実作業をさせる前提」で始めました。1年やって、線引きはこうなりました。
| 任せていい | 自分で持つ |
|---|---|
| 調べる・整理する・計算する | 誰に売るかを決める |
| 下書きを作る・書き換える | 出していいかを判断する |
| 抜けを指摘させる | 数字を信じるかを決める |
| 分け方の候補を出させる | やめる判断 |
右の列は、取り返しがつかないものです。第3回で引いた線が、1年たっても変わりませんでした。
もう1つ、思っていたより効いたことがあります。材料を渡せるかどうかで、返ってくるものの質が変わることです。
第1回で「うちのマーケ部は何をする部署か」を確認し、第5回で行動を集め、第20回で費用を全部足しました。この作業をやった分だけ、AIの答えが使えるものになりました。
原理を知る意味は、自分でやるためではなく、渡せるようになるためでした。
今回のまとめ
- 目標は「AIに指示して、返ってきたものを判断できること」だった
- 身についたのは6つの「止める」言葉。AIは前に進める提案しかしない
- 営業で通用しなかったのは道具だけで、身につけたものは全部使えた
- 困ったら4節の表から戻る。法律の回は必ず最新を確認する
- 任せる/自分で持つの線は、取り返しがつくかどうかで引く
- 材料を渡せる分だけ、AIの答えが使えるものになる
この講座はここまでです
30回おつかれさまでした。
次に何をするかは、決めなくていいと思っています。第29回で書いた通り、困ったときに戻る場所が分かっていれば十分です。
最後の宿題:第29回の3行の型で、この1年で決めたことを1つ書き残してください。1年後の自分が読みます。
嫁子: じゃあ最後に、先生としてと、買う側としての両方から言うね。
先生としては、もう教えることはあまり無いと思う。全部を知ってる必要はなくて、聞く相手と戻る場所が分かってればいいからね。分からないことが出てきたら、そのとき調べればいいんだよ。
それと、買う側として最後にひとつ。
この30回でいろいろ文句を言ったけど、私が言い続けたのは1つのことだと思う。こっちを、実際にいる人として扱ってほしいってことだよ。
「30代女性」でもなく、「ターゲット層」でもなくてね。換気扇の油に困ってる人として話しかけてくれれば、ちゃんと届くよ。
それができる人が作った広告は、買う側としても悪くないと思ってる。おつかれさま。